第77回   中国四国小児科学会


 
 会長挨拶
 
 
 第77回中国四国小児科学会  巻頭言
 「こどもと共に」
香川大学小児科学講座 日下  隆
 
 この度、第77回中国四国小児科学会を香川県高松市で、香川大学小児科学講座が主催させて頂き、多くの方々に学会開催にご協力を頂いたことに心から感謝します。本学会での主テーマを、『こどもと共に』とさせて頂きました。小児科での診療や研究、人材教育を通して、こども本人やご家族と共に命を救い、心を守り、こどもが体や心の苦しみから解放され、そして成長していく姿を共に喜ぶことが、小児科医の楽しさであり、醍醐味でもあると考えるからです。
 近年のロシアによるウクライナへの軍事侵攻やイスラエルのガザ地区侵攻、新型コロナ感染症の流行による社会生活の制限に伴う世界の様々な経済的、社会的変容は私たちの実生活に大きな影響を及ぼし、特にこどもたちの社会生活、家庭環境の変化のみならず疾病構造をも変化させています。また他国での民主化体制への抑圧や他の様々な国家レベルでの人々の自由な思想、行動抑制がなされ、世界の国家間の関係の不安定さや地球温暖化による気候変動の大きな影響が広がっている現実や特に日本では少子化の問題が顕著になっています。
 そのような大人自身でも自由な明るい未来が描けない世界観の中で、情報伝達がSNS等により簡便に行われる一方、経済的価値観の均一化や、従来考えられなかったAIによる言葉や思考の形成が自由に出来、人間が今まで人間として創造をしてきた部分が脅かされる危機的な状況でもあります。この中で私たち自身は唯一何を大事に考え、実際に行動すべきでしょうか。現在は、現社会における一人一人の価値観の構築が求められる時代なのです。
 それは周囲の目の前にいる人々が平和に自由に、そして未来が語れるように互いに助け合い、共感することではないでしょうか。こどもは未来です。よって、その究極の行動の一つが医療であり、小児医療であると考えます。現在の小児医療は医学的医療のみならず、『Biopsychosocial』な多面的な関りを求められています。身体的、精神的のみならず社会的なサポートを、病院、家庭、地域(学校)とチームで対応する力が求められています。
 今後も地域医療、医学教育・研究、国際貢献を行う、強力なチームワークの枠組みを作り、こども中心の良質・安全な医療を実践、厳しい倫理観と豊かな人間性を備えた高い能力を持つ医療人の育成、先進医療の開発と臨床研究、地域医療機関との連携が必要です。また地域医療構や、厚労省の働き方改革、専門医機構の専門医制度、感染対策等を重要項目として考え、何よりもまず中国四国地域の私達の連携が重要ではないでしょうか。
 そして様々な分野の連携を通して、中国四国地域のこどもたちのみならず、全国のこどもたちへ貢献し、そしてこどもと一緒に喜ぶことが、私たちの生きる目的となるのではないでしょうか。このことが小児科医としての私達自身、人間的な成熟に繋がると考えます。第77回中国四国小児科学会を通して、様々な小児科学に関する論議がなされ、今後の将来を担うこどもと共に成長できる自分達を見つけることが出来ましたら幸いです。
 
 
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